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レポート まちづくり,サードプレイス,地域・地方

【レポート】【第9回 地域のサードプレイスを考える】~台東区「まちづくり会社ドラマチック」今村ひろゆきさんの取組みから~

開催レポート

2017.2.22 (水) 19:00-21:00

ゲスト:まちづくり会社ドラマチック 今村ひろゆきさん

レポート詳細

■「場作り」から始まる「まちづくり」

 今回のイベントはまちづくり会社ドラマチック代表の今村ひろゆき氏をゲストに迎え、『地域のサードプレイスを考える』をテーマに開催された。参加者は皆、まちづくりに対して思い思いのアイデアや熱意を持っており、実際に行動に移している人もいた。
 ゲストの今村氏は、学生時代のバックパッカーの経験から「日本のまちってもっと面白くできる」と考え、現在の事業を始めた。具体的な事業内容としては、既存の建物を再生・活用し、そこで生まれたスペースを個人や企業に対してオフィスとして提供している。

 今村氏にとってのまちづくりとは、「ユニークな人たちが増える仕組みをまちに備えること」である。その仕組みを作るために同氏は、まちに人が集まる拠点を作り、そこに3つの相互作用的なプログラムを備える必要があると語る。1つ目は、自走するプログラム設計だ。つまり、ユニークな人たちが集まるように場所を用意し、ビジネスとして運用できるようにすることである。2つ目に、個人・団体の活動受け入れ。多様なバックグラウンドや個性を持つ個人・団体を受け入れることで、シェアスペース内で様々な仕事や活動が生まれる。3つ目に、まちの資源の活用がある。まちである活動が行われ始めると、それに共感した人がそのまちで新たな活動を始める。その結果、まちにユニークな人が増える。今村氏は、まちづくりにはそういったサイクルがあり、まちの資源の活用は、そのサイクルが回り始めた頃に取り組むことが重要と述べる。
 今村氏は商業施設の新設など、ハード面でのまちづくりではなく、人と人とが出会う場を作り、その相互作用によってまちを作っていく、いわばソフト面でのまちづくりを選んだ。

Cap:「まちにユニークな人が増えるサイクル」

 

■二足のわらじという選択肢

 今村氏はプレゼンの後半で、自身の経験をもとに「二足のわらじから始めるまちづくり」について語った。同氏は新卒で大手家電メーカーに勤めた後、まちづくりコンサルティング会社を経て、現職に至る。セカンドキャリアから現在の事業を始めるまでには「週4日は社員、週3日は社長」という二足のわらじを履く生活だったという。

 「企業に勤めていれば、まちづくりの最先端のことがわかる。自分でやってみると、まちづくりの実際のところがわかる」

 今村氏は、両者は互いに相反するものではなく、それぞれの仕事に、それぞれの仕事で得た経験や知識を還元することができ、非常に有意義なものだと語る。現在は企業に勤めていて、これから起業したいと考えている会場の参加者などから、「なるほど」「確かに」といった声がいたるところから漏れた。多くの参加者が抱える不安や疑問が、今村氏の言葉で「腑に落ちた」瞬間を感じた。


Cap:ゲストの今村ひろゆき氏と、プレゼンに聞き入る参加者

 

■出会いの中で洗練されるアイデア、そしてアクションへ

 今村氏の登壇が終わると、参加者同士で講演から得た気づきや興味、やってみたいアクションについて、複数のグループ内で話し合う時間が設けられた。講演を聞き、参加者が特に関心を示したことは「人や仕組みというソフトの改革によるまちづくり」というコンセプトだった。参加者は皆口々に、異なるバックグラウンドを持つ人たちが協働したときに爆発力が生まれること、そのために場を用意することの必要性について語り合っていた。ある参加者は、「場作りがまちづくりに繋がるという考え方は斬新だったし、これからの活動の参考になる」と、新しい発想に驚きつつ、自分のものにしようと考え始めていた。

 ひと通り今村氏の講演について感想を語り合ったのち、参加者同士で「自分がやってみたい、やろうとしているアクション」について議論した。ほとんどの人が事前に自分なりのアイデアを用意しており、各グループでそれぞれのアイデアに対するブラッシュアップが行われた。アイデアを潰してしまうような議論ではなく、それを実現するにはどうすれば良いかを話し合う、建設的な議論のなかで参加者は伸び伸びと自分のアイデアを語っていた。
 筆者が所属したグループでは、あるケアマネの女性が提案した「退職後の人たちの出会いを創出するカフェ」について話し合った。彼女には、リタイア後の人たちに自立意識を持ってもらうことで、介護人口を減らしたいという思いがあり、そのために前述のカフェを考案したそうだ。彼女のアイデアに感銘を受けた参加者たちからは、「人材派遣のような形にするといいのでは」「地域のことをよく知っているご老人にはガイドの仕事を斡旋してはどうだろうか」など、事業化に向けた具体的な意見が数多く出た。最後の交流会で、彼女は「今まで周りには反対されていた、でもここの人たちは応援してくれて、さらにいろんなアイデアをくれた。絶対に実現する」と、興奮冷めやらずといった様子で語っていた。

 人と人との組み合わせによっておもしろい、活気あるまちをつくる。そのために、人と人とが出会う場所をつくる。今村氏が考える「まちづくり」のコンセプトは簡潔かつ明確だ。今回の参加者はイベントを通じ、人と人との出会いによって、新しい発想が生まれることや自分のアイデアが磨かれていくことを体感したはずだ。
                                            (文:酒巻 徹)