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<特別講演会>革新的な技術が経済社会にもたらす変革を、我が国の「稼ぐ力」とするために

2016.01.15(金)

レポート詳細

2016年1月15日発行 中小企業振興 第1160号 4面に本講演会の記事が紹介されました。

中小機構は昨年12月16日、東京・大手町のビジネス創発拠点TIP*Sで特別講演会を開催した。今年で30周年を迎えた東京都異業種交流プラザ21との共同主催で、講師は内閣官房の松永明審議官。松永審議官は「革新的な技術が経済社会にもたらす変革を我が国の稼ぐ力とするために」をテーマに、人工知能やビッグデータなど最新の技術動向や、社会への影響などを解説。集まった約50人の参加者は耳を傾けていた。

松永氏は、日本のGDP(国内総生産)に占める製造業の比率は約2割と、英米仏など先進国がその比率を低下させている中で、「日本は減っていない」と指摘。ただ、海外生産の進展により、「国内に残るのはマザー工場とイノベーション拠点だ」と強調した。

そうした環境下で、IoT(モノのインターネット)やビッグデータなど製造業をめぐって新たな展開が起きているとし、とくに「クラウドコンピューティングと人工知能(AI)という2つのブレークスルーが質的な変化をもたらしている」とした。クラウドコンピューティングでは、世界のデータ量が2020年には2000年比で約6500倍に増加し、そうしたビッグデータを活用した利用事例を挙げた。また、AIは人間が知識を教えなくても自律的に知識を取得できるレベルに達しているとした。この2つの技術により、さまざまな産業構造の変革が起きていると述べた。

なかでも、ドイツが志向しているインダストリー4.0は、自動化と自律生産方式を組み合わせて生産ラインを自律的に組み替えることを目指している。これが実現すれば「変種変量生産も可能になり、競争優位性を持つ」という。これらイノベーションを利用すれば、「自動車の自動運転技術はIT企業も参画しており、業種の区分が無意味になる」と指摘。産業構造が変化し、競争環境が変わる中では「企業が提供するモノやサービスの本質を問い直される」「必要なデータを迅速・的確に収集し、解析して活用することが産業競争力の源泉になる」と強調した。

日本ではビッグデータやAI関連のグローバルな有力企業が少ないものの、一方でブロードバンド普及率が高く、医療保険やコンビニエンスストアなどが大量のデータを保有するなどのメリットがあるとも指摘。最後に、日本でも経済産業省、文部科学省、総務省の3省が連携し、AIを核としたIoT推進に乗り出し、先進的なモデル事業創出、規制改革などの環境整備を始めたことを紹介して締めくくった。