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TIP*S POST vol16 こぼれ話

2020.09.17(木)

レポート詳細

 

【レポート】私の働き方の「これまで」と「これから」をTwo Loopsモデルで紐解こう!

 

働き方改革やワークライフバランスなど、これまでの働き方を見直す動きが活発化していた昨今。ここに新型コロナウイルス感染症の影響も加わり、従来の常識が一気に覆された部分もあります。いろんな選択肢が浮かぶ中、自分にとっての望ましい働き方を考えるワークショップが行われました。TIP*Sでのリアル(対面型)イベントは、およそ4カ月ぶりの開催です(※)。

※十分な感染症対策を講じたうえで実施しました。詳細は広報誌『TIP*S POST vol.16』をご覧ください。

 

社会の変容は新旧パラダイムの移り変わり

本ワークショップのファシリテーターは、ワークショップデザイナーの丹羽妙さん。『内省と対話』に関するテクノロジーを使いこなし、企業や大学、市民活動など、組織のコミュニティづくりの支援で活躍しています。 

 この日もテレワーク下でもいきいきと働けるチームにするにはどうすればいいかと、ベンチャー企業から相談を受けていたそう。Withコロナ時代における働き方の課題が、個人だけでなく組織でも生じていることがうかがえます。

今回のワークのポイントでもあるTwo Loopsは、社会変革ファシリテーターで、日本でも広く活躍するボブ・スティルガー博士が編み出したモデルです。スティルガー博士はTwo Loopsを用いて、社会の変容を次のように説明しています。

 

・社会に受け入れられたモデルは成長し急拡大するも、時代の移り変わりに伴い停滞期を迎え、頭打ち期を経てやがて終息を迎える(旧パラダイム)

・旧パラダイムが頭打ち期にさしかかると、次の時代を担うイノベーターが登場し、新パラダイムが発現する

・イノベーター同士がつながることでアイデアが洗練され、有用性が高まる。それがコミュニティで実践されるうちに育っていき、徐々に“新しく強い当たり前”が出来上がる(新パラダイムの成長)。

・社会変容は旧新のパラダイムの成長と衰退、入れ替わりの繰り返しである

 

 

加えて丹羽さんは、Two Loopsにある“橋”の存在がポイントだと指摘しました。

「古いパラダイムから新しいパラダイムへ移り変わるとき、多くの人は尻込みしてしまうものです。しかし、『こうした使い方もあるよ』と現状とのつなぎ役が存在すると、新しいパラダイムが急速に広まる場合があります」(丹羽さん)

例えばZOOMやSkypeなどのWeb会議システムは、遠く離れた人をオンラインでつなぐイノベーティブなツールです。しかし何年も前に誕生していたものの、“対面が当たり前”とされる日本の社会には、あまり浸透していませんでした。ところが今年に入り、急速に市民権を得ることになります。新型コロナが橋の役割を果たしたからです。

今回は自分のワークスタイルをTwo Loopsに当てはめてみようというもの。都市と地方、出社とテレワーク、単一労働とパラレルワークなど、さまざまな新旧の軸が考えられる働き方。自分の中の“新”と“旧”を、コミュニティづくりの現場で用いられている手法を用いて見出していきます。

 

ロープの上を歩いて働き方の質感を味わおう

アイスブレイクで「自分の働き方への関心」を明らかにしたところで、さっそくワークにチャレンジ。ここで出てきたのが、3本のロープです。丹羽さんとスタッフでTwo Loopsモデルの形になるように、床に配置します。新旧それぞれのパラダイムのロープの端は間を空けて並べられていますが、橋でつながっている部分も。参加者のみなさんも、少し不思議な表情を見せながらも興味津々です。

「自分のテーマを決めたら、ロープの上を歩いてみましょう!」(丹羽さん)

参加者はロープをたどりながら、それぞれの状態を定義していきます。そして重要になるのが、その場での感覚を受け止めること。ワクワクするのか不安なのか、ラクな気分かそれともタフなのか、足元の刺激を意識しながら、何かを確かめるように歩んでいきました。

全員が2周したところで、丹羽さんはロープ上の“今の自分の場所”に移動するように指示しました。向きや立ち方も、その後の考察の観点になります。近くにいる人たちと、その場所の位置づけや感覚を共有し合いました。

旧パラダイムの衰退期近くに立つ人が「自分の働き方に疑問を感じ、モヤモヤしている」と語れば、「コロナで働き方が変わり、これからが楽しみ」という新パラダイムの入口に立つ人も。またパラレルワークで活躍の場を見出した人は「楽しく充実しているが、苦しいと感じるときもある。仲間をふやしたい」と橋に足をかけていて、それぞれの思いが場所に表れていました。

 

現状を確認したところで、今度は自分が惹かれる場所に移ってみます。ほとんどの人が移動し、近くの人とその場所に惹かれる理由や立ってみて感じたこと、気づきを共有しました。語り合ううちに、さらに移動する人も出てきました。人が集中している部分も見られます。旧パラダイムの終息期、橋の近くです。

「この場所はいろんな方向に進めるだけに、お得感がある。でも選択肢があり過ぎて、迷ってしまうかも」(参加者)

「現状に甘んじているのを仕事のせいにしていた部分がある。本当は好きなことを見つけ、ジャンプアップしたい自分を見つけた」(参加者)

また新パラダイムの入口の混沌とした感じを楽しむ人や、先端を行く面白さ人を味わう人がいる中で、底を抜けたあたりに立つ人も目立ちました。

「先端はチャレンジングで面白いかもしれないが、次への不安を感じてしまう。少し先が見えるあたりがちょうどいい」(参加者)

 

モヤモヤしていた働き方観が徐々に明らかに

こうして現状と理想を行き来し、いろんな気づきを得た後で、改めての今の自分の場所に移動してみることに。すると、最初とは違う場所に立つ人がたくさんいました。

「最初は新パラダイムの先端にいると思ったけれど、それは旧パラダイムの成長期なのかもしれない。独りよがりになるのではなく周りを見ることで、そのことに気づいた」(参加者)

また新旧の狭間でもがく人もいます。

「今思えば、以前の働き方はラクだった。でも新型コロナの到来による変化が速すぎて、新しい働き方に飛びついたつもりが、飛びきれていなかったかも」(参加者)

新しい課題に気づきつつも、表情はどこかスッキリとした印象。モヤモヤしていた自分の働き方観が、明らかになってきたのかもしれません。

 

ワークの最後はディスカッションです。Two Loopsで気づいたことや感じたことを踏まえ、これからの働き方を実現するうえで踏み出したい一歩を書き出します。そして一歩の内容やテーマが近い人同士でグループになり、自由に語り合います。

20人の参加者は、4つのグループに分かれました。新しいコミュニティを創りたい、仕事でドライブをかけている実感を得たい、パラレルキャリアなど新しい働き方を実践したい、心の趣を大切にしながら働きたいといった内容で、新たな一歩に対する思いや気持ちを言葉にしていきます。ロープの上で沸き立つ感情や手触りを確認したせいか、オープンな姿勢で対話に臨む模様がうかがえます。自分の心の内をさらけ出すと同時に、周りの話に耳を傾けゆったりと引き出していく雰囲気が、自然とつくられていきました。

クロージングでは全員で円を囲み、一人ひとりの今の気持ちをシェアしました。「仕事の向き合い方を変えていきたい」「人によって時間の概念がまるで違うことに驚いた」「ワークを通じ、ループの存在を実感した。若い頃の働き方に戻ってみてもいいかも」など、いろんなコメントが上がったところで、ワークショップは終了。

短くも濃密な時間を過ごし、参加者のみなさんも明日への活力をチャージできた模様。心なしか軽い足取りで、会場を後にする人たちが多い様子でした。

 

〈丹羽さんのコメント〉

久しぶりのリアルイベントで、とっても楽しかったです! Two Loopsを使ったワークショップは昨年に働き方改革のテーマで行いましたが、今回は参加者のみなさんがよりジブンゴトと受け止めてワークに臨んでいたような気がします。以前からみなさんの中でぼんやりと捉えていたものが、新型コロナを契機に顕在化したのかもしれません。

そのせいか今回のロープのワークでは、旧パラダイムから新パラダイムへのジャンプが、どこか軽やかだったのが印象的でしたね。昨年はもう少し重苦しい雰囲気だった気がするので……。新しい波をみなさんなりに受け入れ、変化を楽しんでいるのだと感じました。

〈イベントメモ〉

タイトル:私の働き方の「これまで」と「これから」をTwo Loopsモデルで紐解こう!

開催日時:2020.7.10(金) 19:00-21:30

ファシリテーター:丹羽 妙さん(中小機構人材支援アドバイザー)