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【レポート】【第3回】ワークショップ「愛され必要とされる企業になる瞬間」―ゲスト:特定非営利活動法人まちづくりGIFT:代表理事 齋藤潤一さん

2017.02.28(火)

19:00-21:00

レポート詳細

■「愛」と「誇り」の地域づくり

 「愛され必要とされる企業になる瞬間」をテーマとするワークショップシリーズ3回目は、特定非営利活動法人「まちづくりGIFT」代表理事の齋藤潤一氏がゲストスピーカーとして登壇、ビジネス・コミュニティデザイナーの但馬武氏がファシリテーターを務めた。講演は2部構成で、前半は齋藤氏の地域づくりに対する考え方について、後半は齋藤氏と但馬氏の対談形式で進められた。

 齋藤氏が地域づくりを始めたきっかけは、同氏が創業したWebブランディング会社に地方企業から来た再建依頼だ。「再建に成功したら、依頼先の社長にとても感謝された。自分が身につけてきた金儲けのスキルが人と地域を救うことができる」と考えた齋藤氏は、その後全国の地域を巡り、自分が地域づくりに貢献できる方法を模索した。視察の結果、齋藤氏は活気のある地域には共通項があることに気づいたという。それは「ヒト・モノ・カネがきちんと回り持続可能な経済が成り立っていること」である。そして、その経済モデルを成り立たせるには、地域住民が地域に対して「愛」と「誇り」を持つことが必要不可欠であると語る。

Cap:ドイツの都市フライブルクを例に地域づくりを語る齋藤潤一氏

■地域をつくる、人を動かす

 後半の齋藤氏と但馬氏の対談では主に地域づくりを成功に導くための、人の動かし方について話し合われた。人を巻き込み、動かすにはまず自分から動かなければならない。しかし、アイデアを持っていても実行に移すことができる人間は全体の10%にも満たないという。齋藤氏も、ITの世界から地域づくりの世界に飛び込むには相当の葛藤があった。「自分を奮い立たせるために、同じ志を持っている人たちがいる場所、そして実際に地域の活性化を行なっている場所に出向いた」と齋藤氏は述べる。自分がやろうとしていることに対する愛を深めるために、環境を変えるという選択をしたのである。

 地域づくりは地域の人たちが主体となって行われるべきものであり、彼らに当事者意識を持って動いてもらわなければならない。「人を動かすための、効果的な方法や言葉はある?」という但馬氏の問いに対して、齋藤氏はこう語る。「まずは自分の本気度を見せること。次に結果を残すこと。言葉に行動が伴うと、言葉の重みが変わります。それを継続することで活動に協力的な人が増え、持続可能な経済が形成されます」一貫性と継続性、人を説得し動いてもらうには相当な根気と時間が必要となる。さらに齋藤氏は、義務感や危機感を人々に植え付けるだけでは地域づくりは成功しないという。「自分たちの地域が持っているものがいかにすごいかを気づいてもらい、知ってもらう、そして自分たちの地域を愛してもらい、誇りに思ってもらう。そうやって地域のことを自分ゴトとして取り込んでもらうことが大切」と同氏は語る。地域への愛と誇りが、地域住民の地域づくりに対するインセンティブになる。

 齋藤氏は「地域づくりと会社づくりは似ている」という。目的のために組織をつくり、その目的を達成するために組織を動かしていく、どちらも構造的には同じである。では、人に愛されるようになるにはどうすればよいか。「地域にしても会社にしても、中にいる人が愛して、誇りに思ってあげないと誰も愛してくれない」という言葉には、会社と地域双方のブランディングに携わり確実な成果を出して来た齋藤氏ならではの重みがあった。

Cap:ファシリテーターの但馬武氏(左)とゲストスピーカーの齋藤潤一氏(右)

■思い思いの感想をシェア

 講演後に感想をシェアする時間が設けられた。参加者は地方の活性化に関心を持つ人が多く、数々の地方創生プロジェクトを手がけてきた齋藤氏の、実体験を元に語られる地域づくりに携わることの喜びや苦しみ、ブランド構築のノウハウは、彼らの今後の活動に良い刺激となったようだ。特に参加者が関心を寄せいていた話題は、齋藤氏が語る人の動かし方だ。企業で働きつつ、地域のために何かをしたいと語る男性は、「変化に抵抗がある人たちを巻き込むために、先に実績を作る方がいいのはわかるが、初動は常に尋常じゃないつらさがあるはず。始めに動いてくれる人を見出すのは大変だし、何もない状態でインセンティブを与えることは容易ではない」と、地域づくりに際し必ず立ちはだかる大きな問題に考えを巡らせていた。また、都内の企業に勤める女性は「自分は人事をしているが、社員にやる気があまりない。齋藤さんは人に愛される企業や地域になるには、まずは中にいる人が愛してあげなければならないと言っていた。自社の社員たちにも、自社の良さに気づき、学び、愛してもらえるように頑張ろうと思う」と、齋藤氏の話から得た知見を自分の職場で活かそうと意気込んでいた。「地域の人にとってはありふれているものを、そうじゃないと気づかせ、愛してもらい、誇りに思ってもらう。つまりソフトの改革だ。外側からできることは限定的だが、誰かがやらなければならない」と、自身が取り組もうとしている地域づくりという仕事の重要性を再認識し、自分を奮い立たせようとしていた参加者もいた。齋藤氏の講演を聞き、参加者が思うことは様々だったが、共通して言えることは、皆今日のワークショップで得たインプットを自分自身のアクションにつなげようとしていることだ。

Cap:思いの集まり(一部)

 

文:酒巻 徹