logo menu

【レポート】「数字の学び」ワークショップ~決算書は作っておしまい?いいえ、「勝」用しないともったいない!~

2018.06.11(月)

19:00-21:00

レポート詳細

私たちは毎日なにかしら数字に触れて生活をしていますが、それでも数字に対する苦手意識を持っている人は多いのではないでしょうか?しかしビジネスにおいては、さまざまな判断基準になる重要なもの。「数字」を読み解くことができると会社の経営状態を把握したり、次なる打ち手を考えていくことができます。



▲“だえみさん”(右)から紹介を受ける“りーりー”(左)

 

今回のワークショップは「数字」をテーマに、経営者視点で読み方や使い方を学びました。

講師は、公認会計士そして税理士でもある李顕史さんです。TIP*Sのママこと“だえみさん”のマラソン仲間でもあるそうで、だえみさんからは“りーりー”と呼ばれているのだとか。あだ名で呼び合うアットホームな雰囲気もTIP*Sの魅力のひとつです。

この日の前半は日常生活での数字の関わりを問題形式で解きながら学び、後半はみんなが知る企業の事例を経営者の視点で見ていくという展開のワークショップでした。

まずは、各グループで自己紹介から。「最近欲しいと思った高価なもの」や「意気込み」を伝え合ってスタートしました。

 

ワークの最初は、グループで模造紙に「経営者が見る数字」を書き出すというもの。与えられた5分間にメンバーみんなで思いつく限り書き出していきました。“売上”、“残業時間”、“人件費”、“広告宣伝費”・・・短時間で70ワード近く出したグループもありました。いいウォーミングアップになり、グループであれやこれや言いながら盛り上がったので「数字」への心構えがここでできたように思います。



▲改めて私たちの生活にはたくさんの数字があることに気づきます

 

ここから問題形式で数字を読み解くグループワークが始まりました。まずは、李さんが実際に質問を受けたことがある事例からの出題でした。

「定期券と回数券どっちがお得?」

まだpasmoやsuicaがなかった学生時代を過ごした方は、1回くらいふと思ったことがあるかもしれません。定期券や回数券の金額など提示された条件をもとに「どちらが有利なのか?有利になる金額っていくら?」「何回以上通うと、6ヶ月定期券が有利になる?」といった問題が出されました。それぞれ電卓をカタカタとたたきながら、答えを導き出していくと、久しぶりに学校で数学の問題を解いているようなどこか懐かしい気持ちになりました。

 

ほかにも「ケーキとダイエットの話」で問題が出されたり、私たちの生活に関わる身近な問題でわかりやすく数字への意識が高まっていきました。「経費削減というのは、こういったところから始まるんです」と李さんは言います。

続いて、「儲けの最大化」を考える問題。徒歩、自転車、バイクといった移動手段によって、異なる支出や収入の条件から一番儲かるものはどれかを答えるというものでした。ここで李さんが伝えてくださったのは「数字の見方は、軸によって違う」ということ。支出、収入、収支、長期間の収支など、どこを重視して見るかによって儲けの捉え方が変わってきます。だからこそ李さんは「『この見方で本当にいいのか?』と常に常識を疑ってみてほしい」と言います。



▲ワークになるたび、みんな真剣に解いていました

 

次はビジネス視点がより強くなり「売価の考え方」を学ぶところに入っていきました。

コンビニの平均顧客単価、仕入原価、販管費といった数字を提示され、営業利益はいくらになるのかを出しました。その数字の事実を見て、「この営業利益では生活できない」というマイナス思考、「売上高営業利益率が10%はいい数字である」というプラス思考の双方の解釈を知りました。ここからわかったことは、「1%値下げするなら、1%値上げして売れないほうがいい!」ということ。出された数字をマイナス思考で見ていると、値下げをして売ることを考えてしまいがちです。しかし、プラス思考で捉えてみるとわずかな値上げでも利益は値下げ時よりも増加します。値上げしても付加価値をつけて売る努力をしたほうが結果的にいい数字を生み出すことができるというのがわかりました。数字を読み解く面白さが、わかってきました。

さらにビジネスにおける大切な数字「財務諸表」を、みんなが知る企業事例をもとに見方を学んでいきました。

“結果にコミット”のフレーズで有名なライザップの財務諸表から、利益率がよい理由を考察してみたり、カルビーの成長要因はどこにあるのかをグループで議論し合ったり。李さんがそれぞれの企業の背景や特徴を交えて話してくださいました。数字の事実だけを見てさまざまな判断も可能ですが、数字の背景にある企業の特性や状況を理解することでさらに踏み込んで仮説を立てていくことができます。

そもそも、数字を見ることが必要なのはなぜでしょう?

それは「無駄を省く」「良いところを伸ばし、悪いところを改善する」ことにあると李さんは教えてくれました。これを理解して企業の数字を見ると、損益計算書から“収益性”、2つの決算書から“成長性”、貸借対照表から“安全性”といった企業の力を知ることができます。



▲数字を読む、使う面白さを教えていただきました


次々と李さんから出される数字のうんちくも面白く、すっと理解することができ、ワーク後半には数字への苦手意識が薄れていった人も多かったでしょう。かつて数学が好きな友人が「数字は言葉と一緒だよ」と言っていたのを思い出し、当時少し言っていることが理解できなかったけれど今ならその意味もわかるかも…と思いました。

そして、ライザップとカルビーそれぞれの決算書データをヒントに、どうすれば成長できるのかをグループ内で議論。最後は「経営者なら明日できる行動は何か?」という李さんからの問いに対してグループ内で考えを共有し、この日の気づきをまとめて終了となりました。

 

*****

TIP*Sに訪れると、人との出会いはもちろん、苦手なこともポジティブにできる“きっかけ”があります。

今回のワークでは、私たちの生活にあるリアルな事例や有名企業の決算書を問題形式で見て、参加者同士で対話をしながら紐解いていくことで「なるほど」と思う場面がたくさんあり、苦手に感じていた人にとってより数字が身近になっていきました。もちろん参加者の中には経営者や社内で財務関係の仕事をされている方もいました。そんな方たちにとっても、改めて数字の見方を振り返るとともに、数字を見る大切さを感じる時間になったと思います。

(レポート:草野 明日香)