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TIP*S(ティップス)は、中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)が運営する全国の中小企業や小規模事業者、起業に関心がある方などのための場所です。さまざまなワークショップや講座、イベントなどを実施しています。

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レポート TIP*S,変化

TIP*S POST vol15 こぼれ話

TIP*S POST こぼれ話

2020.7.31 (金)

このページでは、季刊誌「TIP*S POST」に書ききれなかった内容を掲載します。
今回は、TIP*Sスタッフが新型コロナウイルスの影響でリアルの場を休止していた日々に感じたこと、そして今感じていることやワークショップの裏話などをお伝えします。

レポート詳細

 

 

オンラインとリアルの狭間で
~新型コロナで見えたTIP*Sが大切にしたいこと

年明けから世界中を混乱させたコロナショック。TIP*Sでも2月下旬以降、ワークショップの延期や中止、4月には休館に追い込まれる事態となりました。けれどもワークショップのオンライン化など、新たな試みにもチャレンジ。TIP*Sにとってもいろんな気づきや変化のある、4カ月間となりました。私たちがいま何を考え、試行錯誤しているのか。リアル(対面型)ワークショップ再開を前に、だえみ(岡田恵実、トップ写真右)と(片岡啓太、同左)がありのままを語りました。

 

 

コロナによってグイっと進んだところもある

――新型コロナウイルス感染症による影響を、初めはどのように受け止めていたのですか。

だえみ:2月に入っても、ワークショップ自体の参加率はよかったんですよね。みなさんマスクと手洗いなど、マナーも素晴らしかった。

だえみ:そこから2週間は忙しかったよね。3月にもいろんな企画を予定していたから、その対応に追われて。

なぽり:ほとんど記憶がないくらい(笑)。

だえみ:一方で、みんなに会えなくて寂しい、学べなくて残念なんて言っている場合じゃない、今だからTIP*Sにできることがあるはずと、チームで話していました。

なぽり:「こういう時こそ前向きに」って、だえみさんが言っていたのを覚えています。

だえみ:例えばよく参加してくださっている方々に対し、「みんなの気持ちを教えて」とラフな状態で発信するとか。

なぽり:みなさんの声が、自分たちの力にもなりましたよね。

だえみ:これまでアンケートならロジックを密に設計して、完璧な状態で尋ねるのが常だったから、チームとしてはすごい変化でした。SNSでのコミュニティづくりも、以前から話は出ていたけどなかなか着手できなかったところを、スタッフののりちゃんが積極的に主導してくれた。だからコロナによって、グイっと前に進んだところがあるんです。

――3月17日には、オンラインでワークショップを再開します。

なぽり:リアルのワークショップを中止して間もなく、オンラインの話が上がったんですよね。

だえみ:今でこそZOOMのようなWeb会議システムもだいぶ浸透したけれども、3月の時点ではそうではなく、TIP*Sメンバーもほとんど分からなかった。でもなぽりが頑張ってくれたよね! 自分で勉強して、やり方をサポートしてくれて。責任感の強さもあって、新人だったはずがみるみる頼もしくなっちゃって(笑)。

なぽり:もちろん、先輩方に相談しながらですけどね…。でも前例のないことだから、誰もがはっきりとした答えを持っていない。手探りで進めていった感じでした。

 

TIP*Sも揺らぎ続けているんです

――3月や4月の時点では、コロナを意識したワークショップが並びます。

だえみ:オンラインでやることは自然の流れで決まったものの、確固とした何かがあったわけではないんです。今回のコロナショックって、私たちも当事者だから。皆さんと同じように、みんな漠然としたモヤモヤを抱えていて、未来が見えないなりに考えながら過ごしていました。

なぽり:この時期はむやみに外出もできなくなって、家で内省することもありました。何ができるのだろう、将来自分はどうありたいのだろう、それなら今はどう過ごすべきなのだろうって。

だえみ:ある意味TIP*Sも、揺らぎ続けているんですよね。空いた通勤電車に乗って、快適だなあと感じたすぐそばで、このままでは再開しても丸の内に人は集まらないかもって思ったり、「オンラインでこんなに参加してくれた!」って嬉しくなっても、オンライン疲れもあるよね…って考えたり。そこで「新しいことを始めよう!」「ガンガンいこう!」っていうテンションでやっても嘘っぽいし、そもそも世の中がそういうノリではなかったですよね。むしろ感じているものを吐き出す、周りの考えや思いを受け止める、自分の心の中を整理する時間が必要だと感じて、みなさんの気持ちに寄り添うプログラムを意図的に企画していました。

なぽり:ワークショップに参加した方は、「みんなは家で何してるの?」「どう思っているの?」と、自分の周りに関心がある印象を受けました。世の中の全員が同時に共通の体験をして、それぞれが何かしらのインパクトを受けた証じゃないかって。

――リアル(対面型)からオンラインになることで、違いは見られたのですか。

なぽり:最初、オンラインはリアルの代替手段だと思っていたのですが、そうじゃないと気づかされました。

だえみ:まず参加者が全国から集まりましたよね。それも休校などもあって、下は高校生から上は80歳近くの方まで。この多様性は、丸の内ではなかなか再現できない。

なぽり:チャットで対話したり、ツールで意見を集約したり、一度にみなさんの思うことを見える化できるのはオンラインの強みだと感じましたね。

だえみ:ただ使いこなしにはどうしても得意不得意が出るから、シーンを選びますよね。それと人との出会いつながっていく部分が、オンラインだとどうしても弱くなる。良くも悪くも、テーマやコンテンツが参加を左右するというか。でもリアルのときは、“つながる”も加味してTIP*Sを訪れる人もいたはずなんです。それが、自分の関心の枠を超えた気づきや、意外な巡り合わせになっていた。ですからオンラインとリアルは、機能が違うかなと。

――リアルが恋しいと、感じることもありましたか?

なぽり:そうですね。リアルのワークショップだと言葉だけでなく、周りの方の表情やしぐさにその場の空気感など、いろんなものを受け取っていると思うんです。そこから対話が盛り上がるという醍醐味は、やはりリアルならではと思いますね。

だえみ:恋しいというより、リアルって思いやりが伝わる空間だなあって思うと同時に、質感の豊かさを確信しましたね。自分と向き合い、問いかけるにしても、その出口は場の豊かさによって変わってくるはずだから。世の中は、人との交わりのオンライン化がますます進んでいくと思うんです。そうした中でのリアルをあきらめたくないというか、リアルの持つ価値をきちんと引き出していきたいって、改めて考えました。

意思ある小さな選択をアクションに

――7月からは、リアルのワークショップも再開しますね。

なぽり:今は、期待と不安が入り混じった感じです。オンラインでの期間を経て、発信の選択肢が増えたと受け止めています。例えば担当しているTIP*S(※)ラジオの出演者を迎えて、ワークショップをやってもいいかもしれない。地方で活躍されている方々も、オンラインなら参加できると思うので。コンテンツを届ける側として、価値の最大化を図るために器をどう活かすかをしっかりと考えていきたいです。

だえみ:3、4月を経て、私たちのメッセージも「寄り添う」から次のフェーズに入りました。動くにしても留まるにしても、意思を持つというか。何となく流されるのではなく、「自己判断」がキーワードなのかな。コロナの前ってある意味、恵まれていたような気がするのです。景気がいい実感はそれほどなかったかもしれないけど、仕事もあるし収入も得られる、それが当たり前でずっと続くものと思われていた。

でも社会や経済の、何より人の動きが突然止まって、当たり前だと思っていたものが、そうじゃないと気づかされたのがこの4カ月間でした。裏を返せば、今までたくさんのチャンスを見過ごしていたともいえるんです。そのチャンスを見つけてもらおうとTIP*Sは始まったのだけど、自発的な気づきを大切にしたくて、あえてゆるやかな雰囲気にしていました。だけど、今はもう少し分かりやすくしてもいいのかなって。今までなら動く気持ちがあればOKだったけど、今度は少し動いてみようよ、みたいな。

 

壁に掲示されている、都道府県別にTIP*Sラジオの出演者を記録した地図。休館中もTIP*Sラジオは継続していた。

 

――TIP*Sファンの中には、ショックを受ける方もいるかもしれませんね。

だえみ:今時点では、前のTIP*Sが好きだったと感じる人もいるかもしれませんね。それは嬉しいしありがたいことです。ただ、TIP*Sは“生もの”なんです。安心感やつながりは大切にしつつ、時代のリアルに呼応していきたいなって。新型コロナによって、世の中が一気に変わったようにも見えます。けれども開設した当時と今を比べても、みなさんの人生観や働き方に対する考え方自体が、周りの刺激を受けながら少しずつ変わって来た部分もあると思うんです。TIP*Sもそうした変化を汲みながら、常に留まらずにいたい。例えばワークショップに頻繁に参加されていた方が、今度はワークショップをファシリテートする側に回ったとしたら、大きな行動の変化ですよね。みなさんの意思ある小さな選択が、TIP*Sがあることで新たなアクションにつながったら素晴らしいな、嬉しいなという思いでいます。

なぽり:私自身にも相当な変化があったように、コロナを経て、みなさん一人ひとりにも何かしらの変化があったのではないでしょうか。その変化をシェアすることで誰かに響き、また新しい変化につながるかもしれない。そうした化学反応がたくさん生まれるよう、TIP*Sが触媒になれたらという気持ちでいます。

だえみ:ここはひとつ、“素”の自分でぶつかって来てほしい。この数カ月のドラスティックな体験によって、みなさんもまわりに着飾っていたものを外し、むき出しの自分と対峙した時間があったと思うんです。私たちも“素なTIP*S”で、みなさんと向き合っていきます!

 

※地方で新しい働き方や地域の魅力づくりに取り組む人たちのインタビューを、YouTubeやPodcastで配信する企画。