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TIP*S(ティップス)は、中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)が運営する全国の中小企業や小規模事業者、起業に関心がある方などのための場所です。さまざまなワークショップや講座、イベントなどを実施しています。

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レポート サロンゼミ

TIP*S POST vol18 こぼれ話

TIP*S POST こぼれ話

2021.1.21 (木)

このページでは、広報誌「TIP*S POST」に書ききれなかった内容を掲載します。 今回は、2020年年末にオンラインで行われたTIP*Sサロンゼミ【新しいアクションや起業に踏み出すための『問い』づくりゼミ】の開催レポートを主に参加者の声に焦点を当て、掲載しています!

レポート詳細

一年の計はパフェにあり⁉ だえみのひらめきで始まった新企画

 

TIP*S POST Vol.18で取り上げた「サロンゼミ」(ゼミの詳細を知りたい方はこちら)。始まりのきっかけは、2020年の年明けにさかのぼります。TIP*Sスタッフのだえみは、カフェでパフェを食べながら、前年の振り返りや今年やりたいことなどを語り合うのが年始の恒例行事になっています。そのお相手は、中小企業基盤整備機構 人材支援アドバイザーでエイチタス株式会社 代表取締役の原亮さん。原さんは、サロンゼミで「新しいアクションや起業に踏み出すための『問い』づくりゼミ」(以下「問い」ゼミ)のファシリテーターを務めています。

これまでさまざまなワークショップを、年間200本以上のペースで続けてきたTIP*S。だえみはその充実度や効果には納得はしているものの、“やりたいこと”があるけれど一歩を踏出すのに迷いがある人に向け、より効果的に支援できないかと考えていたところでした。

 

これまで地域や企業を相手に、アイデア創発や具現化をサポートし続けてきた原さんに、だえみはひとつの質問をします。

「何か始めたいとモヤモヤしてる人が実際に動き出すときって、何が起こっているの?」

だえみは起業や新しい活動を始めた人と、やりたい気持ちはあってもできない人の間に生じている溝の正体を知りたくて、原さんに何気なくたずねました。

「うーーん、腹落ちする“問い”との出会いじゃないかな?」

 

それだ……!!

 

原さんの返答により、だえみの頭の中でパッと電球が灯った瞬間です。と同時に、だえみは知り合って何年もなる原さんの口から“腹落ちする問い”という言葉が出たことに、驚きました。本来とてもロジカルで、シャープな考えの原さんが、さまざまな場でのファシリテーションを通じて抽象的なものにも目を向ける変化を感じ取ったからでした。

対話には人の考えや行動を変える力があると、改めて確信しただえみは、その場で「腹落ちする問い」に出会うプログラムをやろうと原さんに提案。原さんもだえみのアイデアに賛同し、こうして生まれたのが、「問い」ゼミ(詳しくはこちら)でした。

 

サロンに参加して、新たなビジネス始動!~ゆうきちさんの場合

 

年明けのひらめきから生まれた「問い」ゼミ。半年近くかけてつくり込んだプログラムは、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、オンラインでの開講となりました。それでも「会社を立ち上げたい」、「カフェを開くのが憧れ」といった未来像を描きながらも、でも本当にできるのだろうか、どうしたらうまくいくのだろうと、不安を抱えながらやって来た受講者からは大好評。「一歩を踏み出す勇気をもらえた」という、ゆうきちさんにサロンゼミについてインタビューしました。

 

ゆうきちさん

【プロフィール】

現職は機械メーカーの役員。同時に婚活・恋愛ブロガーとしても活躍。自身の経験に基づく結婚・恋愛にまつわるコラムは人気が高く、読者の婚活相談にも応じている。

 

――今回のサロンゼミに参加したきっかけを教えてください。

新卒で就職して間もなく、「いつか起業しよう」と決めていました。特別やりたいことがあったというよりは、大企業特有の組織政治やパワーゲームなどのわずらわしさから早く解放されたかった(笑)。だから経営者に必要な資質を身につけて、早く独立したいと考えていました。

そうした中で温めていたのが、婚活ビジネスです。私自身が婚活経験者であり、副業で結婚にまつわる記事を10年近く執筆しています。恋愛や結婚は人間の普遍的なテーマですから、何か面白いことができるのではないかと考えていたのですが、本業の役員の仕事も忙しく、なかなかアクションを起こせずにいました。

ところが今年に入り、新型コロナウイルス感染症の影響で、少し時間の余裕ができました。これはチャンスと、自分で婚活パーティーを企画したのですが大失敗! 思うように集客できず、第三者の声がほしいと思っていた時に、「問い」づくりゼミの開講を知りました。オンラインなら仕事とも両立しやすいので、思いきって参加することにしました。

 

――どのようにして、アイデアを具体化していったのですか。

プログラムは全4回で、およそ1カ月後の最終回ではビジネスアイデアを90秒間ピッチで発表します。それまでは毎回設けられた題目に合わせて考えをテキスト化し、徐々に掘り下げていきます。途中でゼミのメンバーにシェアして、フィードバックを受ける形で進められました。

メンバーは、それぞれ自分なりのアイデアを持ってゼミに集まっています。みんな一歩を踏み出せずにいて、でもこれを機に何とかしたいと思っている。共通の思いがあるから、お互いに親切になれるんですよね。毎回の宿題もきちんとやってくるし、誰かのアイデアをバカにすることもない。住んでいる場所も年齢も、普段何をしているのかも知らない人たちなのに、自分のことのように応援したくなる雰囲気はとても不思議でしたね。

と同時に、自分は周囲の環境と戦っていたんだと気づきました。起業について相談できる相手はなかなかいないし、思いきって友達にアイデアを打ち明けてもネガティブな反応ばかりだった。それはきっと、周りのほとんどが組織に属している人たちで、その枠組みの中での議論に呑み込まれていただけに過ぎなかったのです。

 

――最終的に、どのような事業アイデアを発表したのですか。

90秒ピッチでは、コンプレックスのある人でも安心して使えるマッチングアプリを紹介しました。現状のオンライン婚活ツールは、やはりプロフィール写真の印象が良くないとなかなかうまくいきません。ルックスに自信がない人でもうまく自己アピールできる仕組みをつくれたら、マッチング機会が増えるのではないかと考えました。ピッチの反応は、残念ながら今ひとつでしたね。「コンプレックスを言い訳にしている人には、魅力を感じないと思う」という指摘はごもっともで、検討の余地がありそうです。

でもゼミに参加したことで、起業意欲は確実に上がりました。頑張っているのは自分だけじゃないと、気づくことができたからです。終了後にはさっそく、オンライン婚活サロンを立ち上げました。婚活に勤しむ人たちで、有益な情報や悩みを自由に共有し合える場を設けることにしたのです。開設して1カ月ほどですが、会員の数も順調に増えています。先日も「オンラインお見合いでは、どのような背景がベストか」といった話で盛り上がりました。

今は“婚活”というと恥ずかしい、周りに知られたくないという人もいます。そうしたネガティブなイメージを払拭し、オープンに婚活できる世の中に変えていきたいですね。

 

 

ずっと通いたかった、ビジネススクールにチャレンジ~山口さんの場合

 

サロンゼミ第2弾は「幸運学~不確実性のなかで新たなアクションをとる方法~」(以下「幸運学」ゼミ。詳しくはこちら)。ファシリテーターを務めるのは、早稲田大学ビジネススクール教授で、国立音楽大学では経営戦略担当として理事を務める杉浦正和さんです。

杉浦先生は長年教授として指導する中で、「ビジネススクールで扱う科目は、いかにして順当に運を良くするかについての実践的方法だ」と考えるように。それを『幸運学』(日経BP)という本にまとめました。

「幸運学は不確実な世界を賢明に歩む支えとなる」と述べる杉浦先生の考えに、だえみも強く共感。杉浦先生へのアプローチの末、念願の開講となりました。

 

「幸運学」ゼミもオンラインでの開催となり、全国からいろんな参加者が集まりました。そのひとりである山口はるなさんも、九州から参加しました。

 

山口はるなさん

【プロフィール】

九州在住。精神科病棟に勤務する現役ナース。依存症など心の病を抱える患者と接するなど、感情との向き合い方に直面する場面も多い。医療に限らず幅広い領域の学びに関心を持つ。

 

――今回のサロンゼミに参加したきっかけを教えてください。

半年ほど前にYou Tubeで杉浦先生が登場された対談を拝見し、そこで幸運学を知ったのがきっかけです。先生のお話がとても面白く、その後に本も読んでみました。“幸運”というとパワースポットや言霊みたいな話になりがちですが、先生は運について論理的に解説されています。自分でコントロールするということに共感し、杉浦先生に本の感想や思いをぶつけたところ、Facebookでつながることができました。先生の本にある“機会”を自分で開拓したわけです(笑)。そのご縁で、杉浦先生からサロンゼミの紹介を受けました。

現役のビジネススクールの先生が、外部でゼミ形式の連続講座をすることなどなかなかないでしょうし、本の内容をベースに対話を通じて理解を掘り下げていくというプログラムも魅力的に映りました。受けない理由はないと、すぐに申し込みました。

 

――メンバーのみなさんとは、すぐに打ち解けられましたか。

さすがに最初は緊張しました。普段は病院というリアルな場で患者さんと向き合っていることもあり、オンラインで知らない人同士で対話などできるのだろうか…などと思っていました。とはいえ『幸運学』の本という共通の話題があるので、話し出すと徐々に盛り上がり、みなさん素の自分になって本音で語り合うことができました。

今振り返っても、改めていろんな人の声を聞くことが、自分の糧になりましたね。知識を積み上げることは、本を読んだり誰かの講義を聞いたりと一人でもできますが、やはり限界があります。それぞれにバイアスがあり、自分の考えの枠を超えることはなかなか難しいからです。

ところがサロンゼミには本当に多様な人たちが集まりますから、日ごろ自分が所属する環境では出てくることのない考えや気づきに出会えましたし、また私の考えもじっくり聞いてもらえました。杉浦先生の丁寧な語りかけもあり、ゆったりした雰囲気に包まれた特別な空間でした。

 

――ゼミを通じ、どのような変化がありましたか。

幸運学に出会ったのは、これまでのキャリアに迷いが生じた時期でした。新型コロナウイルスの影響で病院は混乱し、モチベーションも下がってしまって、ナースとして働くことの意味を改めて考えていたタイミングだったのです。

その直後にサロンゼミに参加して、メンバーの一人である70代のコンサルタントの方に、「あなたは若いのだから、副業でも株でもチャレンジしてみればいい」と発破をかけられました。必ずしも安定だけが自分を満たすわけではない、ゆらぎの要素があることで仕事を頑張れたり、チャレンジを楽しめたりできるのかもと、とても前向きになれました。最初は半信半疑だったリモートでのやり取りでしたが、逆にこの関係だから率直な言葉で話せたり、異なる考えにも素直になれたりしたのかもしれません。これは大きな発見でしたね。

ゼミへの参加を経て、前から興味のあったビジネススクールに通うことを決めました。医療とは畑違いの分野でもあり、なかなか踏み出せずにいたのです。けれども多様な刺激を受け、議論し合うことの面白さをゼミで味わうことができて、やっと気持ちが固まりました。勤務先の上司とも相談し、入学に向け準備を進めているところです。新たなチャレンジに、今からワクワクしています。

 

 

これまでの経験を活かした“展職”に前向きに~木村さんの場合

 

そしてもうひとり、「幸運学」ゼミを受講した木村篤樹さんは、通常のビジネススクールでは得られない気づきに出会えたと振り返ります。

 

木村篤樹さん

【プロフィール】

大手製紙メーカーで技術営業部門の企画職に従事。デジタル印刷の黎明期から開発に携わり、市場への普及に奔走する。マーケティングの理解を深めるためにビジネススクールに通うなど、勉強熱心な一面を持つ。

 

――今回のサロンゼミに参加したきっかけを教えてください。

開催の1カ月ほど前に、久々に散髪したのと絡めて「チャンスの前髪」の話をSNSに投稿したんですよ。ギリシャ神話に出てくる、幸運の神カイロスのことです。そうしたら、友達がこのセミのことを教えてくれました。早稲田大学ビジネススクールに通っていたこともあって、杉浦先生のゼミと知ったら俄然興味が湧きました。

ちょうどその頃、仕事で行き詰まりを感じていたんです。ですから「幸運学って何!?」っていう好奇心が半分、もう半分はもしかしたらブレイクスルーのヒントが得られるかもという期待を込めて受講しました。

 

――幸運学を学んでみて、どのような気づきがありましたか。

杉浦先生は、運には自分でコントロールできる運とそうでない運の2種類があり、このうち「自分でコントロールできる運」を幸運学の対象としています。自分をコントロールできる運とは、開発できる運である「機会」と管理できる運である「確率」です。そしてキャリア開発や人間関係を築くことは機会に、的確な意思決定や感情コントロール、資産管理は確率につながっていきます。

改めてこれまでの自分を振り返ると、仕事でも新たな切り口を見つけたり、ビジネススクールに通ったりして、自分なりに機会の開拓を積極的に行えていたと思います。でも確率については頭になかった。頑張っているわりに報われないと感じていたけれども、確率を意識することで結果は変わってくるのかもと思うようになりましたね。

 

――ゼミメンバーと対話して、印象に残っていることは?

ゼミは杉浦先生の書籍をあらかじめ読んでおき、毎回その場で設定したテーマについて、3人程度に分かれて対話と共有をくり返す形で進められました。参加者は多様性に富んでいて、幸運についてそれぞれの経験を交えながら語っているせいか、しっかりと傾聴できたのが貴重な経験でした。意見を戦わせるのではなく、聞く耳を持って相手の話に対峙することにより、自分の気づきにもつながることを、身をもって体験しましたね。

また同時に、幸運をコントロールするには余白が必要だと実感しました。仕事にせよ何にせよ、詰め込み過ぎはよくないなと。目の前に転がる機会を逃したり、誤った判断をしたりしないためにも、余裕を心がけようと思えるようになりました。

 

――ゼミへの参加を通じて、どのような変化がありましたか。

ゼミが始まったのは、ちょうど同僚に仕事を引き継ぎ始めたタイミングでした。今も順調に進んでいない部分もあって、想定していたよりも時間がかかっています。でも幸運学のゼミを受講したことで、その状況を受け入れられている自分がいます。以前の私なら、もっとイライラ、モヤモヤしていたはず。感情に振り回されず、客観的に状況を受け止められるようになったのは大きな変化です。

今後はこれまでのキャリアを活かして、地方と環境にフォーカスしたビジネスに携わりたいと思っています。まさに杉浦先生の本にもあった、コンパスで円を描くようにキャリアの領域を広げていく“展職”という考え方を実践する形です。受講前から考えていたことだけど、背中を押してもらえたような気がします。

サロンゼミは、仕事や生き方に迷ったとき、立ち止まってじっくり考えを深めたいときに、本当におすすめです。

 

 

今回インタビューに応じてくださったみなさんに共通していたのは、サロンゼミについて語るときの柔和でいきいきとした表情でした。“やりたかったこと”の源泉に触れ、前向きにチャレンジしようと一歩を踏み出せたことで、これまでと違う人生が待っているとワクワクする様子から、こちらもたくさんの刺激を受けました。

 

今後もTIP*Sでは、いろんなテーマでのサロンゼミを開講予定。みなさんの一歩を踏み出す新たなしかけに、どうぞご期待ください!