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TIP*S(ティップス)は、中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)が運営する全国の中小企業や小規模事業者、起業に関心がある方などのための場所です。さまざまなワークショップや講座、イベントなどを実施しています。

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レポート

TIP*S POST こぼれ話 Vol.20

2021.4.5 (月)

レポート詳細

TIP*S POST vol20こぼれ話

このページでは、広報誌「TIP*S POST」に書ききれなかった内容を掲載します。

今回は、vol20の特集、「“ちゃんとしない”をこれからもていねいに~TIP*Sの現在地」のインタビュー完全版。運営スタッフのだえみ(岡田恵実)となぽり(片岡啓太)、さとめ(佐藤めぐみ)の3人が溢れんばかりのTIP*S愛を語ります。

 

参加者と運営の共創がオンラインでの学びの場を築いた

 

だえみ:新型コロナウイルスの感染拡大からちょうど1年。振り返れば、TIP*Sにとってトランジションの1年でしたね。この4月からのオンラインへのお引越しなど、当時はその構想すらなかったのだけど。世の中やワークショップに参加される方、運営チームや私自身の変化をじわじわと味わいながら、トランスフォームしていく時間となりました。逆にこの1年がなければ、今ごろTIP*S自体がどうなっていたかもわからない。

 

なぽり:自分が何をしたいのかも含めて、すごく考えた1年でしたね。みなさんから刺激を受け、動いてみたことも。外部セミナーで受講者側の立場になって、TIP*Sとして安全安心の場を届ける重要性を実感しました。

だえみ:感染症の広まりを受け、去年(2020年)の2月に、丸の内の施設を閉めて予定していたワークショップの中止を決めました。当時は学校が休校になったのと同じ感覚で、感染のリスク回避を最優先に。次第に企業が出社停止にしたり、デパートやショッピングビルが休業になったり。今までの暮らしや経済活動を突然止めることになって、人や社会が分断されていったの。

 

さとめ:世の中が騒然として、これからどうなるんだろうって思いましたよね。

 

だえみ:その様子を見て、こういうときこそTIP*Sが必要だ、営みを止めてはならぬと思ったんだよね。人と直接会えないならオンラインがあるじゃないか、仮にうまくいかなかったとしても、まずやってみようよと、メンバーに呼びかけました。今振り返ると、いち早くジャッジできた自分に「すごいじゃん!」って褒めてやりたい(笑)。

 

さとめ:私がTIP*Sチームに入ったばかりの頃でした。既にオンラインミーティングやウェビナーもあったとはいえ、今ほど一般化していなかったですよね。ましてやTIP*Sみたいな対話を核としたプログラムが実現できるのか…? っていうのが最初の印象。当時はまだワークショップに参加される方の性質や、TIP*Sとの関係性がわからなかったので。でもだえみさんが「やろう」って言うんだからできるんだろうって信じることにしました(笑)。

 

だえみ:はじめは丸の内に何度もいらしたことのある方に声をかけ、テストも兼ねていた感じだったよね。運営側も100%の自信はないけれど、参加者のみなさんも試してみようよと。

なぽり:ちょうど年度末だったんですよ。ほかの業務の引き継ぎなどで目の回る状況の中、ツールの使い方やオペレーションの検討など、合間をぬってやっていましたね。

 

さとめ:実際に運営に携わると、参加されるみなさんとTIP*Sやだえみさんとの間に強い信頼関係が築かれていて、共に場を創る発想が浸透していることに驚きました。画面や音声がうまく共有できていないときも、やさしく教えてくれて。運営と参加されるみなさんの間で刺激し合い、相乗効果が図れていることに感動しました。

 

“ちゃんとしない”をていねいにつくり込む

 

だえみ:4月に緊急事態宣言が出されてからも、徐々にオンラインワークショップの対象者を広げていきました。今の立ち位置や気持ちを確かめるようなワークショップをつくっていったのが5月、そして丸の内でのワークショップを再開したのが7月だったね。

 

なぽり:人を集めてのワークショップは、半年ぶりでした。定員を絞り、席の間隔を広げ、使ったペンやボードも毎回消毒して。パーティション越しの対話でしたリアルっていいなあと思いましたね。人と人が直接会って、双方向性の高い対話ができて。反応もダイレクトで、運営側からすれば助かる場面も多かった。

さとめ:シンプルにみなさんのエネルギーを、直接感じられますよね。オンラインだと一人ひとりが画面に収まっていて、枠を超えられないもどかしさがどうしてもつきまとうから。でもほとんどの方は自宅などご自身と馴染みの深い場所から参加されているから、その人の素のようなものが画面越しに滲み出て来る。プライベートと完全に切り離されていなくて、私たちがみなさんの家にお邪魔するような感覚になれたのは新たな発見でした。

 

なぽり:オンラインだと全国から、時には海外から参加される方もいますしね。丸の内を拠点にリアルとオンラインを並行するハイブリッドのときは、三角形の関係が生まれていた気がしました。講師の方は丸の内にいる方の反応を見つつ、オンラインでつながっている方のようすも意識するというか。参加者の間ではリアルのみなさんはオンライン参加者の反応を知りたくて、またその逆もあってみたいな感じでしたよね。

 

だえみ:オンラインを始めたことで、新たな交流や展開が生まれたよね。でもだからといって、企画の基本的な考え方やコンセプトは特別変えたことはなかったな。あくまでも、TIP*Sの世界観を共有できる人に来てもらえたらいいなって考えているから。これからの世の中とか心の動きとか、身のまわりの空気から何かを感じ取って、対話や学びを重ねながらひとりの人としての振る舞いを考える、動いてみるといったことにピンと来る人たちというか。

 

なぽり:マサさんとのワークショップを考えるときも、みんなどんなことに関心があるだろう、今の時期ににしているものは何だろうと、いつも雑談からスタートしていますよね。

だえみ:TIP*Sってクリティカルシンキングや経営理論のような、ナレッジを扱う場とは少し違う。そうした“ちゃんとした”形式のものを提供する場は、世の中には既にたくさんあるから。でもTIP*Sが届けたいものって、言うなれば自分に“ちゃんと”向き合うきっかけ。出会った人たちが新しいアクションを起こして、起業や創業につながったら確かに嬉しい。一方で、やりたいことはあるけれど「今は動かないほうがいい」と判断し、現状を甘んじて受け入れることも“ちゃんとしている”と思うんです。

だからTIP*Sでは参加されたみなさんの“ちゃんと”を後押しできるように、あえて“ちゃんとしない”ことを意識する。隙をつくっておく、とも言い換えられるのかな。

 

なぽり:“ちゃんとしない”ことを、ていねいにつくり込んでいますよね。それが参加される方どうしで主体的に言葉を交わす、真剣に考える、でも心を開いてリラックスする、誰かにやさしくなるといった場の空気感につながっているのでは。もちろん運営の事務まわりは“ちゃんと”を徹底していますが(笑)。

 

新たなフェーズに導いたこの1年と丸の内での時間

 

さとめ:だえみさんって、やっぱり人のことをよく見ていますよね。少し前に「その人のタイミングではないところで、“動こうよ”というメッセージを送るのはどうなんだろう」って、深く考えていた時期がありましたよね。何かを伝えたとき、全ての人が同じように受け止め、理解するなんてあり得ないからって。

だえみ:そうだね。確かに今年度は、よりアクションにつながりやすい、解像度の高い企画を意識してきました。以前も少し話したことがあるのだけど(TIP*S POST vol15参照)、コロナ前はいわゆる平時だったんだよね。それなりに景気もよく、何となく働いていても困らない。変化することも、個人に帰属する側面が大きかった。でもコロナによって当たり前だったものがそうじゃないと気づき、今までと違う生き方を模索する人も確実に出てくるはずで。そうしたことを肌で感じながら、悩んだり捏ねたりしてコンテンツを企画しています。それはオンラインになっても、ずっと変わらないな。

 

なぽり:丸の内の閉鎖が決まって、はじめは何とも寂しい気持ちになりました。でもいろんな方とお話しするうち、拠点があることでTIP*Sの魅力を閉じ込めてしまっていたんじゃないかと考えるように。オンラインによって幅広い層にリーチできることが、この1年で証明されたのですから。だから今は、TIP*Sを広く届けられる可能性にワクワクしています。

 

だえみ:“場所がある”ことの安心感ってとても大きいからね。でもコロナが収束する姿がまだまだ見えない中で、場を持ち続けることがかえって足かせとなる可能性もある。私たちがこの4月から新しいフェーズに自然な形で移れるのは、この1年間、以前とペースをほとんど変えずにオンラインでワークショップをやり続けてきたから。そして丸の内がなくなってもTIP*Sをやれると確信できたのは、過去の積み重ねがあってなんですよね。

オンライン上でTIP*Sらしいコミュニケーションを編み出せたのもみなさんと一緒だったからだし、丸の内から飛び出したときに「一緒におもしろいことやろう!」って賛同してくれる方々が各地にいるというのは本当に心強い。丸の内でTIP*Sの価値を深めてきたから、これからがあるのだとつくづく感じます。

さとめ:私、何かを手放すことは余白ができると捉えているところがあって、今回のTIP*Sも同じことが言えると思うんです。丸の内という場を手放すことで、新しいことにトライする余白ができたのではないかと。今の社会に合わせて、TIP*Sがより進化する段階に入ったんですよね、きっと。幼稚園から小学校に上がるような感じで。

 

だえみ:デジタル空間で人が出会って関係を築いていくことは、ITの世界では既に当たり前に存在していたんだよね。それがコロナをトリガーにして、よりウェットなものもデジタルに移っていったのが今なのかなと。だから感染の広まりが収まっても、学びや出会いのスタイルが多少の揺り戻しはあれ、以前と同じになることは考え難いですよね。

そのことを踏まえると、期せずしてこの1年が新しい形態に移行する助走期間になったのは、すごい巡り合わせだと思うの。確かに丸の内がなくなることは寂しい。だけど形が変わってもTIP*Sに愛を注いでくれる人の存在を確かめられたから、新たな一歩を踏み出すことができます。もちろんTIP*Sチームみんなの愛も、ちゃんと感じているよ!

 

なぽりさとめ:はい! これからも“ちゃんとしない”しかけを、ていねいにつくり込んでいきます(笑)。